【R&D】デジタルフォースゲージを用いたグリップ診断の定量的検証 〜適合グリップによる体幹安定性の実証〜
【R&Dレポート】デジタルフォースゲージを用いたグリップ診断の定量的検証 〜適合グリップによる体幹安定性の実証〜
1. 検証の目的
これまでのグリップ診断において感覚的に捉えられていた「自身に合致したグリップを握ることで得られる体幹の安定と筋出力の向上」について、実際にどれくらいの重さ(引張荷重)に耐えられるのかを定量的かつ高精度に数値化することを目的とする。
2. 使用機器および測定方法
使用機器
デジタルフォースゲージ(Nidec FGP-50)
※「押す力」や「引く力」をデジタル数値で高精度に測定・表示する電子式の力測定器。本検証では引張荷重測定を行い、一定時間内における最大値を記録・保持する「ピークホールド機能」を使用。

図1: 使用機器(Nidec FGP-50)
測定方法
- 被験者の腕にケーブルストラップを強固に巻き付ける。
- ストラップの下部にデジタルフォースゲージのフックを引っ掛ける。
- 試験者が下方へゲージを引っ張り、被験者が姿勢(バランス)を崩す直前、または耐えきれなくなるポイントの最大引張荷重(N:ニュートン)を測定する。
- データの信頼性を高めるため各条件で5回計測を行い、近似値3つの平均値を最終結果とする。

図2: グリップ診断における実際の引張荷重測定の様子
3. 測定結果
本来のグリップ適合タイプが「2タイプ」である男女2名の被験者に対し、手の状態および各グリップタイプ保持時の数値を比較した。
| グリップ状態 | 被験者A(男性・本来2タイプ) | 被験者B(女性・本来2タイプ) |
|---|---|---|
| 手をパーにした状態 | 246.8 N | 138.2 N |
| 1タイプ 保持 | 313.9 N | 193.4 N |
| 2タイプ 保持(★適合) | 455.5 N (バランス崩さず・実質計測不能) |
286.2 N (バランス崩さず・実質計測不能) |
| 3タイプ 保持 | 301.8 N | 190.4 N |
| 4タイプ 保持 | 300.8 N | 212.6 N |
4. 考察と結論
- 体幹安定性の定量的実証:
手をパーにした状態では体幹への力の伝達効率が低下することが数値的に確認できた。何かを握っている状態と比較して、許容荷重が著しく下がる傾向にある。 - 適合グリップによるパフォーマンス最大化:
自身のタイプに合致するグリップ(両者とも2タイプ)を使用した場合、試験者が強く引っ張っても姿勢・バランスを全く崩さず、試験者の引張張力の限界(実質的な計測不能レベル)に達した。実際のポテンシャルとしては、記録された数値以上の荷重に耐えうることが推測される。 - 不適合グリップにおける傾向:
自身のタイプに合致していないグリップであっても、手をパーにする状態よりは高い耐性を示す。また、非適合タイプ間でも数値の傾向(得手・不得手)が明確に分かれることが確認された。
ピックルボールにおける優位性
ピックルボールは、ネット際の細かな攻防(ディンクショットなど)において、体幹の強さと軸の安定性がラリーの優劣を決定づけるスポーツです。今回の検証により、「自身に合致したグリップ構造を選択・使用すること」が、フォームの崩れを防ぎ、競技パフォーマンスを最大化するための重要ファクターであることが数値的に実証されました。
5. 今後の課題と展開(測定治具の開発)
今回のテスト手法(ストラップを介した人力による引張測定)では、荷重が大きくなるにつれて真っ直ぐ直下に引き下ろすことが物理的に困難となり、適合グリップの正確な上限値を計測しきれない(計測不能になる)という課題が残った。
実際のグリップ診断で行っている「肘を上から垂直に押す動作」を正確に再現し、より厳密な定量的データを取得するため、今後は専用の押下圧測定用治具(測定デバイスマウント)の設計・制作を進めていく。
【参考】専用押下圧測定用治具の形状案
現在設計を進めている専用治具の3Dモデル案です。被験者の腕部にフィットするよう湾曲した接触面を採用し、上部からデジタルフォースゲージを接続して垂直に押し込む(押下する)使用方法を想定しています。これにより、力の方向を一定に保ち、より精度の高い定量的データの取得を目指します。


【実例動画】グリップ診断の実際の様子
先日、株式会社フェイスの吉井様をお招きし、実際にグリップ診断を実施させていただきました。
本レポートの数値検証で行っている診断プロセスや、適合グリップによって身体の軸が変化する様子を分かりやすく動画にまとめております。定量的データとあわせて、実際の検証風景をぜひご覧ください。
動画が枠内で正常に表示されない場合は、こちら(YouTube公式サイト)からもご覧いただけます。